そうして、これもハッキリしつつあることは、ミドルユーザーの消失、とまではいかなくても、その影が薄くなっているということだろう。
これは、推測するにジュエリー特有の現象で、ジュエリーが好きな消費者は急速にへビーユーザー化し、特別好きではない、普通、という消費者はライトユーザーで止まってしまう傾向がある、ということだろうと思われる。
ともかく、この経験度別に見た消費者の動きを総括すれば、「消費者の二極分化傾向」と言える。
一方は、ジュエリーの平均保有個数が10個を越え、知識量も豊富で、選択眼も厳しいヘビーユーザーという層。
そしてもう一方は、保有個数は少ないが、しかし人数としては全体の3割強を占め、しかもここからヘビーユーザーに進化しうる潜在的へビーユーザーを含むライトユーザーというボリューム層である。
重要なことは、この「消費者の二極分化傾向」が、これからのジュエリー市場を、構造的に決定していくということである。
ヘビーユーザーが求める商品と、ライトユーザーが求める商品はおのずと違ってくる。
購入する場所、条件、要求してくるサービスも違う。
どちらに照準を合わせ、どういうアプローチを試みるのか、その戦略が今後の勝負を決することになる。
店頭の売上比率が落ち、展示会販売などの催事販売比率が増えている。
顧客が、店頭で買うより、卸会社が主催する展示会や、店舗主催の特別展等で買うことが増えているせいだ。
理由はハッキリしている。
顧客にとって、通常の店頭に魅力を感じなくなり、わざわざ店に足を運んでジュエリーを買う気力が失せているからだ。
卸会社が主催するホテル等での展示会に行けば、何よりも豊富な商品を見ることが出来、サービスも良い。
時にはディナー・ショーまであり、雰囲気も良い。
価格は必ずしも安くないが、こうした付加価値やサービスが、今の顧客、特にジュエリーを買い慣れた顧客には魅力的なのだ。
もっとも重要なポイントは、品揃えの豊富さでありその雰囲気である。
ある程度のジュエリー経験を持った人にとって、自分が見たり、買いたい商品というのは、自分が持っていない商品であり、ほとんどの場合、自分が持っているジュエリーよりいい物でなければならない。
つまり、ジュエリーの場合、顧客の欲求というのは絶えず上昇し続け、コモディティ・グッズのように同じレベルでのリピート購入は起きない。
すなわち小売店が顧客をいつまでも自店に繋ぎ留めるためには、品揃えをいつも新鮮にし、店頭に新しい商品を絶えず投入し続けなければならないのである。
しかし、なかなかそれが出来ないため、小売店は卸会社主催の展示会に顧客を連れていき、顧客満足を一時的に獲得しようとする。
しかしこうして展示会に連れていった顧客は、次第に店頭には足を運ばなくなる。
一度おいしい思いをすれば、誰もそれを忘れることは出来ない。
顧客は展示会でしか買わなくなり、店を振り返ることがなくなり、結果、店頭からますます顧客はいなくなるというわけだ。
優れたショップ・オーナーは、このことに気付いて、苦しい思いはするが、あくまで自前の展示会を行い、顧客満足を勝ち取っている。
しかし、ほとんどの小売店は、顧客が遠ざかることがわかっても、当面の売上欲しざから、卸会社の展示会販売に頼ってしまっている。
店頭が形骸化し、形ばかりの店構えになるのも、そう遠いことではないのかもしれない。
ジユエリーマキの980円K18ピアスの登場で、価格競争も行き着くところまで行った感がある。
これで利益がとれるわけがない(いまでは100円ピアスというのまで一部ではやっている)。
ジュエリーMではこれを宣伝費として位置付け、集客の目玉として扱った。
これは、いわば戦術であり、セールス・プロモーションの類ぃである。
この手のものは例外となるが、ジュエリーのすべての商材は、ここ数年激しい価格競争に見舞われた。
右上に掲げた表は、ダイヤモンドのカラット当たり輸入単価の推移である。
加工コストも競争に晒され、「加工賃」「ヘリ」すべてに値下げが進行した。
一部では、バンコクをはじめとする海外への生産地シフトも進行している。
右下の表は、あるショップにおけるKl8ダイヤモンドリングの値入れを、時系列でみたものである。
平成3年と7年を比較すると、約2〜3割下がっており、売上の低迷が、単価の落ち込みによる影響もあるという実態がうかがえる。
ダイヤモンドリングはある意味で、小売店にとっては飯の種である。
価格競争もある程度まではせざるをえないという事情もある。
しかし、一部の賢明な経営者は、この価格競争の先には何もないことを見抜き、早くから価格競争の範晴に入らない商品の強化に力を入れていた。
小売店から最近よく聞く言葉に、「プロパー商品が売れなくなった」というのがある。
ここで言う「プロパー」とは、「定番」とか「ベーシック」を指していると思われるが、バブルの頃はまさに飛ぶように売れた喜平のネックレスや地金物のリング、フープのピアスやダイヤのプチ・ペンといった基幹商品が、ここに来てパッタリ売れ足が止まっているということらしい。
これによる影響は、しかし思いのほか大きい。
プロパー商品の売上というのは、それが毎月コンスタントに売れることで、企業の安定化をもたらす。
また、どちらかといえばビギナーの人が対象になるから、新規客の獲得も容易にする。
新規客は、企業成長の最高の栄養源である。
プロパー商品の中のベーシック商品の利益率は、競争が厳しいカテゴリーであるため低くならざるを得ないが、企業の長期的成長には大きな貢献を果たす重要な商材なのである。
したがって、これが振るわないとなると、企業としては非常に苦しくなる。
不振の理由は、いろいろ言われている。
見解は分かれているが、整理すると次のようになる。
1.ベーシック商品がある程度行き渡り、消費者は差別化商品を求め始めている。
2.ベーシック商品の売れる場所、消費者にとっては買う場所が違ってきた。
すなわち、消費者は通販やディスカウンターなど、いわゆる宝石店ではないところでベーシック商品を買っている。
3.宝石店が真剣にプロパー商品を育て、販売する努力をしてこなかったために、プロパー商品が単なる安売り商品になってしまい、自分たちの商材として取り込めなくなった。
答えは3つとも当たっている。
しかし、1と2については、すべてが正しいわけではない。
1については、確かにある程度のジュエリーを買ってしまった顧客にはそうかもしれないが、ビギナーやライトユーザーにとっては、いわゆるベーシック商品は今も十分魅力的なはずである。
しかも、ビギナーは、毎年市場に新規参入しているのである。
2については、確かに通販は宝石の販売チャネルとしても市民権を確保しており、ディスカウンターもジュエリーを相当手広<扱うようになってきている。
しかし、消費者のなかには、どうしてもそれらの店や買い方が好きではないという人がいることも事実であり、全ての消費者が流れているわけではない。
こう見て来ると、一番の重要な原因は3に不況の実像があるように思える。
すなわち、プロパー商品が売れないのは、売れないのではなく、売る努力をしてこなかった結果だということである。
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